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土砂災害防災のフィールド
ネットワークで繋がろう、広げよう

~言葉はわかりやすく、つくる輪は親しみやすく~

一般の方々に、土砂災害とその対策について理解していただくこと、またその理解を通じて防災意識を醸成・維持していただくことは、簡単なことではありません。私たちが砂防の広報に携わって30年以上、これまでに培った経験と知識を多面的に活かし、様々な活動の支援や資機材の提供を行います。

砂防フィールド
コミュニティ

スタッフの取材記録などを交えつつ、土砂災害を克服してきた各地の活動紹介や情報提供を行っております。
この場を通じて新しい発見や様々な交流が生まれることができれば幸いです。

中越メモリアル回廊特別企画「震災遺構を考える」を講聴してきました

◇日時 平成25年6月29日(土)13:30~16:30
◇場所 長岡震災アーカイブセンター「きおくみらい」
◇主催 中越メモリアル回廊推進協議会(長岡市・小千谷市・公益社団法人中越防災安全推進機構)
◇主旨
東日本大震災被災地では震災遺構についていろいろな意見が出ている。残すべきか、撤去すべきか、中越ではどうだったろうか。3つの震災メモリアルパークを考察しつつ、東日本大震災被災地へのメッセージとしたい。

基調講演では、(一社)減災・復興支援機構の木村拓郎理事長から「災害遺構の保存について~災害伝承を考える~」と題し、被災地域住民の負の遺産への「思い出したくない、見たくない」といったような心情があること、しかし災害を考えるうえでは事例を減災につなげることは重要であることや被災地を見に来る方々の動機はどうであれ防災への意識高揚とともに地域活性に繋がることを強調されました。遺構を残すことは、3つの効果があるとして、「被災地としての証」「減災対策の強化と促進」「地域復興の促進」と説明がありました。

つづくパネルディスカッションでは、「中越の震災遺構の役割とは」がテーマ。

○パネリスト
木村拓郎氏 (一社)減災・復興支援機構 理事長
上村靖司氏 長岡技術科学大学 准教授
澤田雅浩氏 長岡造形大学 准教授

○コーディネーター
稲垣文彦氏 (公益社団)中越防災安全推進機構 理事

以下、主なコメントです。
・災害も遺構もどうしても風化してしまうが「誰のために、何のために(残すのか)」を考えること。
・人間の心をどう残すか、物語を語り伝えること。
・遺構(の整備)が出来上がった達成感だけでなく、自分たちのモノとして将来に繋げること。
・大量に(集中投資的に?)砂防工事が行われ、今の暮らしが再建されていることなどをメモリアル
にするべき、どう動きをつくるか。(住民・行政にはできないことがあり、第3者の役割も大きい)
・黒子として頑張った人たち(復旧関係)のことは物語として遺構に繋がる。
・遺構の第一義は減災対策(意識啓発)である。見た人に印象を与えるには現物を見てもらうことが
一番わかりやすい。
・木籠の水没集落を保存することは山古志の宝になるとも言える。このような保存にあたっては法制度
の整備も必要ではないか。
・人を惹きつけ、仲間づくりをしながら地域コミュニティ(活動)をしていきたい。
・地域の自由な企画や取り組み、民意が先行する例はうまくいっている。高齢化する中山間地の在り方
を考えつつ実験的な取り組みは進めていきたい。

以上

長岡でうまいもの、みつけた。

長岡冷麺。。。
最近テレビでも何度か紹介されているのを見ていました。
長岡駅西口大手通沿いの商店街にあります。
今回、念願かなってやっとお店を訪ねることができました。12時、行列のため30分ほど待ってありつきました。具材はほぼサラダ(キュウリ・レタス・トマト・焼豚・ゆで卵・パイナップル)、中華めんに添えられた特製マヨネーズ(お好みでからしも)を混ぜて食します。
見た限りでは全員が冷麺を注文。となりのお客さんの会話「やっぱり冷やし中華にはマヨネーズがないとだめだよね~~」と、長岡では当たり前のようです。マヨを混ぜてもあっさりとした醤油ベースの出汁によくあっていてしつこくありません。とてもおいしくいただきました。これはくせになりますよほんと。
店内ではテイクアウト用も購入できます。
こちらのお店は実は洋菓子屋さんなのです・・・

 

アカタン「歴史的砂防施設に学ぶ体験活動指導者養成講座」でインストラクター2級GET!

6月23日(日)午後、福井県南越前町の「リトリートたくら」で開かれた講座に参加しました。
先人が残した地域の宝であるアカタン(赤谷川)や高倉谷川の砂防施設を活かして、体験を通じて人々が砂防に接する機会を提供し、土砂災害の基礎的知識や情報を伝えられる指導者を養成することを目的とした講座です。

赤谷川 夜はホタルのシーズン
・アカタン砂防に関しては下記もご覧下さい
◇報告 田倉川と暮らしの会15周年記念アカタン砂防交流会

 

◆概要
午後いっぱい(5時間)をかけた、座学と現地での講習が4名の専任講師と3人の1級インストラクターによって行われ、古木地区(アカタン)・瀬戸地区(高倉谷川)の皆さんなど約25名が受講しました。

会場となったリトリートたくら


講座の配布資料
◇プログラム(PDF)

◆講義
講義1「土砂災害を学ぼう」専任講師 澤田豊明先生(工学博士)

「土砂災害とは?」や「土砂災害を防ぐ砂防」、「さまざまな砂防施設」、
「日本の砂防のあゆみ」について写真や図を使ってお話しくださいました。

講義2
・「福井県の砂防」専任講師 田中和利先生(福井県砂防防災課)

「福井県の主な土砂災害」、「土砂災害対策」、「土砂災害防止法」についてお話しくださいました。

・「歴史的砂防施設の保存・活用」専任講師 玉村幸一先生(南越前町教育委員会学芸員)

「文化財保護の概要」、「歴史的砂防施設の保存と維持・管理」、「歴史的砂防施設の活用」について、
文化庁の資料などを使ってお話しくださいました。

講義3「歴史的砂防施設の解説指導法」専任講師 澤田豊明先生

「アカタン砂防施設」と、「高倉谷川砂防施設」について、パンフレットや写真を使ってお話しくださいました。

講義4「安全対策と体験活動指導法」専任講師 田中謙次先生(RACトレーナー)

「体験活動指導のコツ」「安全対策」「救助活動」などについて、
具体的な事例を挙げながらお話しくださいました。

◆フィールド解説
講師 伊藤喜右エ門(キヨモン)さん・伊藤武男さん・権八 實(ゴンパ)さん
座学での体験活動指導法をもとに、現地にて3名の1級インストラクターが
解説の実演をしてくださいました。

車に分乗して現地へ。


6号(松ケ端)の巨石積み堰堤が見えてきます。


説明は、まずゴンパさんから。
立ち位置を考え、大事なことから
選んで伝えます。話しすぎてもNG。


ゴンパさんと伊藤武男さん(中央)を囲んで。
あらら、堰堤の下にイノシシが掘った跡が。
現地にはいつも様々な気づきがあります。


7号(奥の東)堰堤で説明するキヨモンさん。
「身振り手振り」は伝えるための大きな手助けです。

◆まとめの会
受講者には、インストラクター2級の「修了証」と「指導者登録カード」が贈られました。


修了証と指導者登録カード


感想の発表。学んだことや感想を共有する「ふりかえり」は大切。

*** お礼 ***
なごやかな講習会でした。
インストラクターという名前をいただいて、参加者はこれから自覚と探究心を高めながら現地案内ができることと思います。
他の地域にとってもたいへん参考になる、新しい取り組みを体験させていただいたことに感謝いたします。
関係者の皆様、ありがとうございました。
そうそう、現地の散策路には今回も新しいチップが撒かれていて、歩きやすいようにとのもてなしの気持ちが伝わりました。
また、交流会では1年ぶりにお目にかかった皆さんと楽しくお話しさせていただきました。いつもながらキヨモンさんのあたたかなお心づかいにも御礼申し上げます。
みなさん、どうぞお元気にご活躍ください。(N)

 

平成25年度(第31回)土砂災害防止【全国の集い】が島根県松江市で開催されました

◇テーマ
漸に杜ぎ、茫に防ぐ(ぜんにふさぎ、ぼうにふせぐ)~30年前の警告は「未来への備え」~
※漸に杜ぎ、茫に防ぐとは、「危険なことに対しては常に注意をはらい、その兆しがあれば速やかに手当をすべし」という中国の故事です。

梅雨末期の集中豪雨により、島根県全域で1,067件の土砂災害が発生し、被害の大きかった県西部の浜田市、益田市、三隅町では、87名もの尊い人命や多くの財産が失われ、土砂災害に対する意識が一気に高まる契機ともなった昭和58年の「山陰豪雨災害」から30年が経過したことを踏まえ、2回目の開催となる土砂災害防止【全国の集い】が平成25年6月5日(水)・6日(木)の2日間、島根県内をはじめ全国より750名の参加を得て、島根県松江市及びその周辺地区で開催されました。

◇プログラム(PDF)

1.開会式典 <6月5日(水)>
1)主催者挨拶
 
佐藤 直良 国土交通事務次官(太田 昭宏 国土交通大臣の代理)


溝口 善兵衛 島根県知事

 

2)開催地挨拶

松浦 芳彦 副市長(松浦 正敬 松江市長の代理)

3)土砂災害防止功労者表彰
表彰された方々は2名、10団体

2.基調講演 <6月5日(水)>
◇テーマ 土砂災害に対する地域の防災力の育成
瀧本 浩一 氏(山口大学大学院理工学研究科 准教授)
全国各地で自主防災組織などを対象に地域防災力の向上に取り組んでこられた瀧本准教授による基調講演は、安政地震で発生した土砂ダムを示した絵図を示し、先人が災害の教訓など後世に伝えるべきものを記録として残してきたことに言及、果たして、これらを現代社会では活かしているのであろうか?という問題提起から始まりました。
 

現在、取り組まれている防災力向上活動の大半は、「災害の仕組み」、「何か起きた対処方法」のみを教えている現状を指摘。自然災害を普段は目に見えない存在=“幽霊”に例え、見えない幽霊を“どこに”“いつ”出るのか(発生するのか)を想定すること、すなわち災害発生前の準備の重要性に言及されました。
また、土砂災害・水害と地震災害の差異を示し、土砂災害を事前の準備によって被害を回避可能な災害と定義し、土砂災害に対する事前の準備として“どこに”を示すハザードマップの活用、また、“いつ”を知るため国や都道府県の発信する各種情報の活用を挙げ、災害発生時の対応を中心に行われている防災訓練等より、むしろ、これら事前の準備に必要な情報やそれらの入手方法(例えば、全国の市町村で開催されているパソコン教室などにおいて、生活上必要な情報として、これらの防災情報の入手方法を教えてゆくなど)に関する啓発が必要であることを強調されました。
さらに、土砂災害など地域でまだ発生していない事象について、地域の人々に頑張りなさい(=備えなさい)と言っても、行動に結びつけることは無理としたうえで、地域の人々の関心を高めるための手法として、地図を活用した図上訓練(検討)とその後の現地検証について、実践された事例などを映像を交えてその効果を示されました。
地図を見て、避難場所や土砂災害警戒区域などを自分の手で書き込み、塗りつぶし、避難ルートなどについて検討することによって災害の外力を住民は初めて受容し、能動的な活動に変化してゆくこと、さらには、現地を検証することによって、過去の土砂災害に関する経験や言い伝えなどが、地域の方々から提供されるようになることなど、実践経験から得られた様々な現象やノウハウが紹介されました。
東日本大震災以降、防災上のキーワードとなっている「防災教育」については、ギリシャ語で教育を示す2つの言葉“フォルマティオ(仕込む)”と“エデュカティオ(引き出す)を紹介されたうえで、防災も、この仕込み(=防災知識を教え込み、体得させること)と引き出し(ワークショップなどを通じ、考えさせること)の段階を踏むべきであると指摘されました。
最後に、全国の中山間地でも課題となっている地域力の低下に伴う、防災力の甚だしい低下を踏まえ、地域活性化との両輪で防災考えてゆくことを指摘されました。

3.パネルディスカッション<6月5日(水)>

コーディネーター:松本 浩司 氏(NHK解説委員)
 

コーディネーターはNHK解説委員の松本浩司さんです。昭和58年の山陰豪雨災害から30年の経過を期としたパネルディスカッションが行われました。冒頭に松本コーディネーターより、話題①として、山陰豪雨災害の災害経験者を中心に、山陰豪雨災害などの課題・教訓を抽出し、話題②において、山陰豪雨災害以降、現在までの住民・行政機関における土砂災害の被害減災に向けた取り組みを紹介するとともに、これからの島根県における土砂災害対策の在り方や方向性に関する意見交換を行ってゆく旨が示されました。

3-1.話題①『昭和58年山陰豪雨災害などの課題・教訓』

◇パネリスト
清水 美恵 氏(災害体験者 浜田市三隅町向野田地区在住)
竹内 恵南 氏(災害体験者 浜田市三隅町岡見須津地区在住)
松本 健志 氏(山陰豪雨災害時 三隅町職員)
◇コメンテーター
横田 修一郎 氏(島根大学名誉教授)

災害発生直後に島根県が制作した記録映像の一部上映に続き、清水さん、竹内さんから山陰豪雨災害時の貴重な体験を語っていただきました。
清水さんからは、防災無線の呼びかけを受けて、朝方娘さんとともに避難場所に向けて家を出たものの、激しい出水に襲われ、巡回中の人の呼びかけに応じて、指定避難場所への避難をあきらめ、町役場に命からがら避難するまでの経過の体験談が紹介されました。
竹内さんからは、周辺地域の方々と高台にあり婚家であった寺に避難していたときに目の前で、道を挟んだ場所にあった崖が崩れ、13名の方々の命が一瞬にして失われた際の詳細な状況などが紹介されました。
災害発生当時、三隅町職員であった松本さんからは、猛烈な降雨によって、徐々に役場に浸水が始まったことや、浸水によって防災無線が使用不可能となることを見越した当時の町長によって、“非常事態宣言”という言葉を使って最後の放送を行ったことなどが紹介されました。
この災害が残した教訓について、清水さんからは、洪水に流されそうになった経験を踏まえ、現在は家族が個別に必要なものをまとめた非常用持ち出し袋を用意していること、地域の地形をよく知ることなどが挙げられました。竹内さんからは、浸水を恐れ、山手に避難した方々が土砂災害の犠牲になった点を指摘されたほか、前々日の降雨によって、崩壊した崖下集落付近では黒い水がでるなどの異常現象が確認されていたことを挙げ、「普段と違う現象が起きたら、避難等の行動を起こすべき」と強く会場に訴えられました。

松本さんからは、山陰豪雨災害後に防災無線放送の設備を移設するなどした当時の三隅町の対応に加え、自身も昭和18年の土砂災害で山麓から河川傍に移住した経験があったものの、山陰豪雨災害時の土砂災害発生については予見できなかったとのコメントがありました。

横田島根大学名誉教授からは、山陰豪雨災害で土砂災害の被害が拡大した要因について、以下を挙げ、その背景として、東西に広い島根県の県土や災害発生スパンの長さなどがあるのではないかと分析されました。
・山麓に人家が広がる島根県の集落の形態
・地形や土砂災害に対する地域の認識不足
・昭和58年山陰豪雨災害以前にも、島根県内では多数の土砂災害が発生し、多くの犠牲者を出していたにも係ら
ず、これらの経験がうまく現在に継承・伝承されていなかった。

3-2.話題提供
「土砂災害防止啓発紙芝居」上映
実演者:佐藤 るみ子 氏(ピアノ・歌・語り)
砂防ボランティアの皆さん
パネルディスカッションの合間には、島根県砂防ボランティア協会が県内の小学校や幼稚園などで上演している「紙芝居」の実演が行われました。この紙芝居は、平成18年梅雨末期に県東部を襲った集中豪雨災害において、裏山が崩れ、家は潰れてしまったものの、異変にいち早く気付いた家族が間一髪で逃げおうせた事実をもとに、幼いころに体験した印象深い出来事はいつまでも心に残るとの思いを抱く砂防ボランティアのみなさんが、手作りで作成されたものです。
ピアノ演奏と挿入歌の作曲者でもある元学校教諭の佐藤るみ子さんは、島根県砂防ボランティア協会のコーディネーターとして、全国各地で砂防ボランティアのメンバーとともに、土砂災害防止啓発活動を実践されておられます。当日の上演でも、佐藤さんののびやかな歌声に乗せ、土砂災害の恐ろしさとともに、家族や命の大切さを力強く訴えました。
 

★島根県砂防ボランティア協会でコーディネーターをなさっている佐藤るみ子さんと島根県砂防ボランティア協会のメンバーの皆さんによる「紙芝居 大切ないのち」が披露されました。

島根県砂防ボランティア協会(島根県砂防課内)
〒690-0887 島根県松江市殿町8番地(県庁南庁舎)
TEL:0852-22-5206 FAX:0852-22-5788 sabo@pref.shimane.lg.jp

3-3.話題②『昭和58年山陰豪雨災害後の取組と今後の土砂災害減災に向けて』
◇パネリスト
永瀬 晃 氏(自主防災組織 多根の郷 会長)
浜﨑 正英 氏(島根県砂防ボランティア協会 会長)
江角 功 氏(島根県砂防課長)
横田 修一郎 氏(島根大学名誉教授)
◇コメンテーター
大野 宏之 氏(国土交通省砂防部長)

土砂災害防止法を含む近年の自然災害の被害軽減に向けた方策についての解説で始まり、江角島根県砂防課長から県内におけるハード対策の推進状況とともに、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定を島根県ではいち早く完了したことなどが紹介されました。
客席からは、雲南市防災担当者から土砂災害警戒区域内に存在する避難場所の代替施設確保や土砂災害のみならず地震やその他災害と並行して課題解決にあたる必要性について発言がありました。
 

住民主導による取組として、県内の自主防災組織を代表し、雲南市掛谷町多根地区の自主活動組織『多根の郷』会長の永瀬さんから自主防災の取組について紹介がされました。
防災活動に取り組むこととなった経緯や地区内の自治会単位で各戸別に避難場所を決め、マップ化していることや防災のための連絡網の作成などのきめ細かな取組を紹介するとともに、その必要性を会場に訴えかけました。また、開催直前の5月26日に開催した地域主導による総合防災訓練の様子を映像で紹介いただきました。

★地域自主組織「多根の郷(たねのさと)」の土砂災害防災訓練を紹介します。

多根の郷(多根交流センター)
〒690-2706 島根県雲南市掛合町多根418-1
TEL&FAX:0854-62-1610 tane-c@i-yume.ne.jp
◆多根の郷広報誌

全国の自主防災組織の取組の継続に課題がある中で、なぜ、「多根の郷」の活動が継続できているのかという松本コーディネーターからの問いに対して、永瀬さんは、地域で人命を失う土砂災害が発生していることに加え、東日本大震災の発生によって、地域の現在の取組が必要なものであるという認識が醸成されたと回答。島根県砂防ボランティア協会会長の浜﨑さんからは、危険個所の点検等の通常の活動に加え、若い世代を対象とする紙芝居に取り組むきっかけや印象を強くするための工夫、紙芝居と併せて開発し、小中学校における学習で活用されている地すべり模型装置などの取組が紹介されました。
こうした取組を如何に広げ、継続してゆくかを論点とした意見交換として、横田名誉教授は、地域で起きた災害教訓などを如何に広範なエリアの人々にも共感できるものとして“普遍化”してゆくことが重要であると指摘するとともに、地域の地形などについてよく知ることの重要性も併せて指摘されました。
浜﨑さんは “五感”に訴えるための工夫が重要と語りました。
江角砂防課長は、ハード対策の一層の推進を図ることに加え、その限界にも言及。県独自・砂防ボランティアとの連携によるものを併せ、年間107回開催している防災学習会のさらなる推進、防災リーダーの講習会開催とともに、砂防ボランティアに地域の声のモニタリング役としての活躍を期待するとの発言がありました。

このような地域の取組状況等を踏まえ、国土交通省大野砂防部長からは、土砂災害の減災に向けた国としての地域支援方策として、以下の4点が紹介されました。
1.土砂法に基づくイエローゾーンやレッドゾーン、避難場所やそこに至る経路などを占めすハザードマップの
作成支援
2.気象庁と協働した土砂災害警戒情報の発表と、より住民にとって分かりやすい情報提供方法等に関する検討
3.多様な監視・観測データの集約・活用(提供)
4.地域の防災の取組との協働

最後に、それぞれの課題解決に向けた意見などを求められました。
浜﨑さんは、全国の土砂災害の発生件数などを踏まえ、都市圏を含む全国で土砂災害に関する学習を小中学校のカリキュラムに組み込むことを提案。
永瀬さんは、防災活動に関する資金を住民に負担してもらう難しさを指摘。公的な資金支援とともに災害が発生してからではなく、事前に危険個所に対してハード対策を行ってほしいとの要望が出されました。
横田名誉教授は、“本当の防災の専門家は不在”という現実を指摘されたうえで、自身の主宰する「山陰防災フォーラム」を介し、経験の共有を図ってゆくこと、さらに県内の自然災害の発生要因や防災ノウハウを共有するためのデータベース構築を推進していること、その構築と活用を多数の関係機関で図ってゆくことについて提唱がありました。
江角砂防課長は、横田名誉教授から提案のあった「山陰防災フォーラム」との連携、県内自主防災組織の連携を支援してゆく意向とともに、話題①に出演した清水さんから聞いたという“昭和18年災害の際、父が「つえが抜ける」という言葉を使って土砂災害への警戒を促していたことを思い出した”という言葉から知ることとなった、地域に残る土砂災害に係る言い伝え、さらには島根県内に多数残っている災害とかかわりの深い地名などを防災学習の新しいコンテンツとして整理・提供してゆきたいとの発言がありました。
大野砂防部長からも、ハード対策の一層の推進、防災教育の推進、地名等に関する過去の研究成果等を提供したいとの声明がありました。
まとめとして、松本コーディネーターより“土砂災害減災に向けた「連携」の強化”が方向性として示され、パネルディスカッションは終了しました。

4.閉会
次回開催地が熊本県となり渡邊熊本県河川港湾局長が登壇、次回開催に向けた決意を表明されました。
閉会の挨拶は宮川島根県土木部長が行い、約4時間半にわたる【全国の集い】を閉会しました。

5.全国都道府県によるポスターセッション
島根県民会1階ホワイエにおいては、全国の都道府県砂防事業主管課による、「全国からのイチオシ土砂災害対策事例報告」をテーマにポスターセッションが開催されました。
 

 

6.模型実演
島根県民会館大ホールホワイエでは、島根県砂防課の協力のもと、島根県砂防ボランティア協会の作成した模型実験装置2種のデモンストレーションが行われました。


土石流のメカニズムと砂防施設効果を示すための模型実験装置


地すべりのメカニズムと対策方法を示すための模型実験装置

7.現地研修会 <6月6日(木)>
Aコース 素鵞川都市対策砂防事業
Bコース 石見銀山落石対策と素鵞川都市対策砂防事業
※Cコースは中止
翌日、6月6日(木)には、2コースに分かれて現地見学会を開催されました。
好天に恵まれ、順調に予定地を巡り、安全に研修会を終了。

<Aコース開催状況>
 
出雲大社周辺の環境に配慮された素鵞川都市砂防事業の解説

 

松之山中尾の地すべり対策隧道、中はどうだったのか?!

●隧道調査 今回は中尾ブログの3回目。平成25年4月30日の報告です。 江戸時代の隧道と思われる穴の中を覗いて、本当にトンネルになっているのか確認したかったのです。 新潟の歴史的な地すべり対策を調査されている専門家の坂井さんと、事前連絡をとって日程を決め、やっと迎えたこの日でした。

過去ブログもご覧下さい。

・1回目(2012年5月23日)

・2回目(2012年6月22日)

今回は、地元の樋口一次さん(左)と高橋徳重さん(右)が協力くださいました。 徳重(とくじゅう)さんは、若い頃から中尾川で行われた工事に携わり、状況をよく知っていらっしゃる方でした。

見極めたい隧道は川の対岸で高いところに有り、水量が多いと川が渡れず、対岸の雪の崖錐が大きすぎても、雪が消えて小さすぎても、調査は極めて困難になります。 しかし、この日はぴったり最適な現地状況でした。

樋口さんが、まず、隧道の入口側に案内してくださいました。長靴で川を渡り、雪の上を登ります。 スコップでさしている所(写真中央やや左の少し草が生えているあたり)に入口がありました。 現在の川底からは5メートル以上の高さです。

ほとんど土砂で隠されていましたが、スコップで取り除いて、中を覗きました。 確かに人が掘ったとわかる丸い壁が奥へと続き、底には土砂がたまっていることがわかりました。

今度はその下流で大きい穴になっている場所です。 雪の崖錐の先端部にうまい具合に石が乗っていて、その上にスコップを立てかけ、それを足がかりにして上がります。

この穴は隧道の途中が崩落してできたもののようで、左右両方に続いていました。 大きさは、両方とも人が腰をかがめて通れるくらいです。 上流側に向かう隧道は、底にほぼ平らに土砂がたまり、奥に光がさしているのが見えました。

下流側に続く隧道は奥で左に曲がっていて、底には水が溜まっていました。

穴になっている中央部の壁には径10cmあまりの丸い穴が、2mほどの間隔で作られていました。 掘削する時、あかりを灯していたものでしょう。当時の様子が実感として伝わります。

この隧道の出口も知りたかったのですが、埋まってしまったのか、近寄れないような場所にあるのかもしれません。

中尾川には隧道がいくつもありますが、他の隧道は現在の川底に近い高さにあります。 この隧道だけは高い位置に有り、大きな地すべりによる河道閉塞があったのではないかと想像されました。

なお、徳重さんのお話では、昭和の隧道工事はもともとあった隧道に補強を加えたもので、最初の隧道がいつ掘られたかはわからないとのことでした。 中尾地区の、自然災害を克服してきた長い歴史を、多くの方に知っていただければと思います、

●鏡ヶ池の水芭蕉
雪解けに鮮やかな緑の葉っぱと清楚な花を開いた、一番きれいな水芭蕉を見ることができました。 こちらもぴったりのタイミングでした。

 

●山菜
調査の途中でたくさんのみずみずしい山菜達に出会いました。 少し頂いて帰り、調理してみました。 ふきのとうの白和え(左下)・コゴミの胡麻和え(右下)・モミジガサのおひたしおかかかけ(上)。

もうひと品は、山ウドと豚肉のピリ辛炒め煮。

みんなおいしかったです。 自然はたくさんの恵みをくれるから、苦労の多い地すべり地で人のくらしがつながってきたのでしょうね。
(N)

ヤエヤマコシ、挿木してみました

平成25年4月24日、雪解けの山古志へ行きました。 山古志支所の裏の斜面に植えられた、地域固有の桜「ヤエヤマコシ」がこの雪解けでどうだったか、気になっていました。 人の背丈ほどの、まだ若い桜です。去年は、雪のために大きめの枝まで折れて、かわいそうな状況でした。 昨年12月、支所の方が枝をくくって雪に備える対策をしておられました。

『ヤエヤマコシの雪囲い』2012年12月26日掲載

行ってみると今年は大きな被害ではなさそうです。

でも、よく見ると根元のまわりに小枝が落ちています。 拾ってみると、とてもみずみずしく元気そうだったので、持ち帰って挿し木をしてみることにしました。 ヤエヤマコシを増やして、山古志がお花見場所になったらステキだと思うからです。

翌4月25日、鉢に挿しました。

5月4日、何本かは芽が緑色になって、ふくらんできました。 根っこが出ているかどうかはわかりません。

この日、塩沢で見つけた桜の折れ枝も挿木してみました。つぼみがいっぱいついています。 雪で折れた枝は水に生けておくと咲くのだそうです。 木の生命力なのか、それとも折れても保護してくれる雪のやさしさなのでしょうか? 挿木するとどうなのか、このまま咲くとは思えないれけど、根を張って新しい木に育ってほしいなぁ。

(N)

駒ケ根高原で観光モニターツアーが開催されました

駒ヶ根高原(長野県)で観光モニターツアーが開催されました。
主催は、駒ヶ根高原砂防フィールドミュージアム 観光ワーキンググループ。
砂防広報センターは、フィールドミュージアム活動のお手伝いをしています。


(駒ケ根高原砂防フィールドミュージアムの試み)

◇天竜川の支流「太田切川」
長野県伊那谷にある駒ヶ根高原(駒ヶ根市と宮田村の境)を縦断する太田切川は、中央アルプスから際限なく供給される土砂によって土石流や洪水氾濫を引き起こしてきた「暴れ川」です。
国土交通省天竜川上流河川事務所によって砂防事業が推進されています。

(二つのアルプスに挟まれた伊那谷)

太田切川の砂防事業。夏には多くの観光客が訪れます。

この駒ヶ根高原には、太古から幾度もくり返されてきた土石流の爪跡を各地で見ることができます。
いま人々が暮らす広大なゆるい坂(土地)も、土石流と河川の氾濫の繰り返しによって形成された「土石流扇状地」でもあります。

駒ヶ根市と宮田村、そして天竜川上流河川事務所では、これらの土砂災害と人々の歴史・文化などを地域資源として位置付けて、“駒ヶ根高原砂防フィールドミュージアム”として整備しています。 また、各地に点在する豊富な地域資源と防災を結びつける役を担うボランティアガイドの養成にも力を入れています。

◇ここから本題
駒ケ根高原砂防フィールドミュージアムも平成21年7月の開館から3年目を迎えます。 これからのフィールドミュージアムの運営にあたって主要なターゲットのひとつである「観光客」の来訪動機、そして当地の新しい商品(地域資源)の価値にどれくらい満足していただけたのかを把握し、これを今後に活かすための切り口を探ろうという運びになりました。 そこで、平成24年10月、紅葉の駒ケ根高原を目当てに訪れた、フリーの観光客にツアー参加を呼び掛ける“ゲリラ的なイベント”を開催しました。 実は、この日は、紅葉が見ごろを迎える駒ヶ根高原の最盛期。 ここに、観光客がモニターツアーに参加したくなる“仕掛け”を用意しました。

(当日の手配りチラシ)

●朝8:00
紅葉狩りのためのロープウェイはすで4時間待ちの長蛇の列です。

一方その頃、、、自治体職員、地元NPOとともにイベント準備を着々と。

配布資料セットアップ


スタッフミーティング

●朝9:30
そして、受付開始。紅葉狩りをあきらめた観光客が受付に殺到しました!

◇いざ、ガイドツアーにご案内です。
「砂防情報センター」のジオラマ模型や降雨体験機「あめ太郎」で当地の地形の成り立ち、そして当地の暮らしも含めてをわかりやすく解説していきます。

◇土石流のパワーは、点在する巨石で体感。
本当に水の力で巨石が流れるのでしょうか。
ガイドさんの説明で、そのメカニズムを理解します。

◇最後に、砂防施設である太田切川床固工群。
床固工とは、川の底が削られるのを防ぐ砂防技術のひとつ。
観光目的の観光客は、川の底が固めてあることに驚き、熱心に「防災」を学習します。

◇アンケートに答えて、記念品をゲット!
地元特産ジュースやボールペンなどの記念品をプレゼント。
また、学習しに遊びに来て欲しいものです。

このツアーでは、短時間のうちに、約100名の観光客に参加いただきました。
“意外な形”で、地球活動のダイナミズムや土砂災害の認識を深めたといえるでしょう。

◇参加者の反応は貴重な財産。
イベント結果を活かし、様々なガイド手法やツールを開発します。
デジタルガイドシステムは、スマホやIpad向けのGPSと連動した地図アプリ。
ガイドさんがいない時でも、地域資源の解説を見ることができます。
駒ケ根高原砂防フィールドミュージアムの取り組みは進化をつづけます。

(デジタルガイドシステムの開発)

◇欠かせない、ガイドさんの存在。
一見、わかりにくい土砂災害の痕跡なども、ガイドさんの存在が加わることによって、ほかの様々な地域資源と関連づけることが可能になり、充分な観光資源となります。
ガイドさんとの交流は、参加者には、通常の観光に「深み」が加わり、良き思い出となるでしょう。
そして、何よりも、ガイドさんの知識向上は地域防災力の向上にも繋がっている。
この企画運営に携わる関係者だって知らずのうちに防災知識が身についている。 楽しみつつ、地域を盛り上げつつ、知識を習得する新しい地域学習(防災教育)のかたちとも言えます。

以上、T/K

「防災学習お役立ちページ」が 学校教材資料として採用!

当センターホームページに掲載中の「防災学習お役立ちページ」が、
新潟県防災教育プログラム学習指導の手引き【試行版】「土砂災害編」に
含まれる教材資料として採用されました。

新潟県防災教育プログラム学習指導の手引き【試行版】「土砂災害編」《抜粋》